昼前、店の玄関を清掃していた。前を、パイプ椅子を手にしたお爺さんが歩いていった。何軒か先に住んでいるAさんだ。
しばらくすると、おばあさんがゆっくりと歩いていった。Aさんの奥さん。足が悪いのだろう。奥さんの前後を、牛のような柄の猫がついていた。
Aさんは向こうのほうで立ち止まって、誰かの家の庭にパイプ椅子を広げた。やがて奥さんがたどり着き、それに腰を下ろした。Aさんの足元の日なたのところで、猫が寝転がった。体をくねらせ、アスファルトに背中をこすりつけた。
Aさんは奥さんの腰をさすっていた。
1日中、晴れていて、夕焼けが赤かった。