A君とB子さんは友達以上恋人未満でした。
A君は4回、B子さんと食事しました。A君は7割を支払ったそうです。男性が多く出すべきだろう、と。
B子さんはまんざらでもなさそうでしたが、A君は「やっぱり僕たちは友だちでいよう」とB子さんに伝え、自分が支払った7割のうち2割の返還を、B子さんに求めたそうです。男女の仲でなく友だちだから、イーブンだよね、2割返してもらえば平等だよ、と。
そんな話を妻にした。彼女は満面の笑みで、目を輝かせていた。頬が紅潮していた。面白いおもちゃを見つけた猫のようだった。男女の話は面白い。彼女の友人の状況が、少しB子さんと似ていたので、そんな話をしたのだった。
男性が女性に奢るべきかどうかは、可燃性の高い話題だ。サイゼリヤの是非を含め、たびたびSNSで燃え上がる。
日本は女性の地位が低くて収入も低くなりがちだし、男性が女性に奢っていいんじゃないの、男女は役割が違うんだから「平等」じゃなくて「対等」なんだよ、と妻に話そうと思ったけど、イケメンすぎるので黙っておいた。
おかねとはなかなかに手放しにくい。それを投げ捨てる。己の身を切る。喜んで寄付する。喜捨、というやつだ。修行。それが、男を磨く。
「おれなんて、男を磨きっぱなしだよ。だから頭ツルツルだろ?」というジョークを思いついて、口から出かけた。それほど奢っていなかった。大して面白くもなかった。言葉を飲み込んだ。
なに、なにか言いかけた? と問い詰められた。いや、なんかアレだね、なんだっけ、と茶を濁した。グダグダになったので寝ることにした。