パン屋をやることになった。冬の厨房は寒そうだ。フード部門責任者の妻は、厳冬期の装備を持っていない。
彼女をつれて近所のワークマンに行ってみたが、女性用メリノウールは在庫無し。通販で取り寄せようにも欠品中だ。
コストはかさむが、モンベルで装備を整えるか。車を走らせた。行き先は木更津アウトレット。その前に、よりたいところがあるの、と妻。
▼ドイツパン専門店ひととわ
ハードコアなドイツパン専門店。店頭にあった全種、買った。車内に香ばしいパンのにおいがただよった。
「ランチにしようか」
「すぐ近くにおいしい海鮮丼が食べられる店がある。クオッカっていうの」
助手席をたおして丸くなった彼女が物憂げに返事した。車に乗るとすぐに眠くなるそうだ。
▼クオッカでなく「kutta(クッタ)」だった
木更津漁港の中にある食事処。
11時過ぎに着いてすでに行列ができていたが、すぐに入店できた。
▼メニュー
どれもうまそうだ。
生本鮪中落ち丼を所望したがすでに品切れ。
▼kutta丼のご飯大盛りを発注
ペースト状の何かで魚介を丸く固めてある。うまかった。
食べてる間にも行列は伸び続けていた。
木更津アウトレットに向かう前に、このあたりにワークマンがないか探してみた。
▼あった
女性用のメリノウールは上だけあった。その他にも、防寒用の衣服、靴など入手した。
アウトレットのモンベルで女性用メリノウールの下を購入。これで厳冬期の厨房もなんとかなりそうだ。
妻とアウトレットを見物した。
「キミはどんなブランドが好きなの」
「バナナリパブリックとか。アメリカのブランドなの」
店を探して入ってみた。
「私、骨格が大きいから。日本のブランドの服はサイズなくて」
あちこちの服をつまんでみては放して、あきらめたように彼女がつぶやいた。
外に出た。
ディーゼルに入ってみた。
90年代風の革ジャンが吊るしてあった。タイトなライダースではない、ダボっとしたルーズなシルエットの革ジャン。昔はこんな服を着ていた。
店員氏に声をかけ、試着してみた。
「マッドマックスに出てくる人」
妻が指差して笑った。店員氏がうつむいた。肩がふるえていた。
革ジャンを脱いで、店内をブラブラした。
妻が、タイトな緑色のドレスを手に取った。
「これいい」
「プレゼントするよ」
値札を見た。3万数千円。
「今度ね」