温泉でいい気分になり、あがらんしょバイキングをたらふく食べた翌朝のこと。
妻に叩き起こされた。
「近藤勇の墓に行こう」
顔を洗って着替え、ホテルの外に出た。修学旅行生がバスに乗るところだった。駐車場のホテルにいちばん近いところに、真っ黒なレクサスLSのFスポーツが停まっていた。
墓はこのあたり。
会津の町を見下ろす山の中腹のようだ。
ホテルを出て、彼女は坂道を下っていく。かなりの高齢の老夫婦が先を歩いていた。すぐに追いついた。歩道いっぱいに広がってゆっくりと歩く彼らを追い抜くのに苦労した。昨晩、ホテルの売店で店員に何度も同じことを聞いていたおじいさんだ。店員はおじいさんと意思を疎通するため、最後には怒鳴り声を上げていた。出歩いて大丈夫なのかな。
見事な日本家屋が見えてきた。「ネパール博物館」との看板が出ていた。
会津武家屋敷の前を通り過ぎた。 昨日、見学したかったのだが、時間がなく断念した。今日も訪問する時間はない。
ごみ出しに向かうらしいおばああさまに朝のあいさつをしたり。クラシカルな民家から出てきたご婦人に訝しげな視線を向けられたり。
目的地はこの先か。
天寧寺(てんねいじ)。 この裏手に、近藤の墓がある。
軽い山登りになってきた。熊が出そう。
着いた。
妻。寒かったらしく、防寒用のジャケットを奪われた。
春ごろ、彼女が「面白い小説はないのか」と尋ねてきた。ゴールデンカムイで土方歳三に興味を持っていた彼女に、司馬遼太郎の「燃えよ剣」をすすめたらはまってしまい。
昨晩、ホテルで周囲に何があるかGoogleマップを眺めてたら、近藤勇の墓があることを知ったのだった。
土方歳三が、遺髪をここに仮埋葬したという。
左にあるのは、その土方の碑。
そういえば、土方が洋装してからを描いたマンガ「賊軍土方歳三」が面白いですね。
史実と創作をうまく絡めてストーリーを作ってある。この墓には、ほんとに土方が取り返した近藤の首が葬られていたらいいな。