いい革靴をはくのが贅沢。靴箱にピカピカ光る高価な靴が何足も入っている。それが成功の証だ。と思っていた時期が私にもありました。
私が持っている最も高価な靴は、シェットランドフォックスのストレートチップ。けっこう高かった。スーツを着て、ネクタイしめて、この靴をはくと、鏡の中の私は自分比で最高にカッコいい。靴にハマる人が多いのもうなずける。
でも、この靴を最後にはいたのは4年前だ。どれほどカッコよくなろうと、足が痛いからはきたくない。私は足が大きい。形も変なのだろう。店頭で試着する靴がことごとく合わない。小指と親指が痛い。くるぶしの下にもう一つくるぶしのように骨が出っ張ってて、それが靴に当たって痛い。
今までいろんな靴をはいてみて、痛くない靴は、アシックスのゲルカヤノのエクストラワイドだけだった。
ゲルカヤノのエクストラワイド以外はもうはきたくない。シェットランドフォックスがどれほどカッコよくったって。
幸いなことに、起業して自由になった私は、革靴をはかなくなった。スーツもほとんど着ない。私の服装にツッコミを入れる上司はいないのだから。ジャケパンにネクタイを締め、足元はゲルカヤノでキメて、営業に出かける。訪問先は郊外にある工場。目的地はその裏手のコンテナ置き場とか。そんな場所にもしのぎはある。アスファルトがなにかの粘液でぬめってたりするから、スニーカーのほうが安全だ。
こうして私は、電車に乗ってるとときおり見かける「いちおう仕事はしてるんだろうけどビジネスマンぽくはない、なんだか正体不明なオジさん」に進化した。もう革靴をはかなくていいんだ。
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