「伝わるノートマジック」(著 西寺郷太)を呼んだ。誰かのノートや手帳を見るのが好きなのでこんな本は大好物だ。プロのノートはすごかった。
音楽家のノートをそのままひたすら本にしてしまった
音楽プロデューサーであり、作詞作曲家である著者のノートをそのまま掲載した本。著者はラジオ出演や大学の講義のために、ノートを書く。
鉛筆、定規、消しゴム、資料を用意し、1テーマ4ページに5時間かけて書く。
マイケルジャクソンやプリンス。日本のポップス。学生のころだと世界史、日本史。事実を時系列に、執拗に書き連ねる。
プロの仕事ノートを見たい

他者のノートを見るのが好き。現代はSNSに誰かのノートも手帳も溢れているが、それは見せることを前提とした作品だ。私が見たいのは、それではない。
成果を出すための過程としての「仕事ノート」が見たい。そういうのは公開されにくい。今は亡き日経アソシエのノート術、手帳術特集が懐かしい。
本書はプロが成果を出すための仕事ノートとして、凄まじいレベルに達している。公開を前提とした作品ではないのに、作品にもなってしまうほど。
私はマイケルも、日本のポップスも、ほとんど知らないけど、それでもノートが美しいから読みこんでしまって、読む前よりは80年代の音楽シーンの知識が高まった気がする。
手書きのマジックとは
これがマイケルのパワポ資料だったら読まない。ノートだとなぜ読んでしまうのか。
著者も触れているが、そこにプレゼンを成功に導く秘訣があるのだ。
著者の仕事論、プロフェッショナル論も垣間見れる。プロのノートには濃密にエッセンスが詰まっている。クリエイターとなるか、消費者となるかは、そういうことなのだろう。
ノートというと、マインドマップに代表されるように、発想を書き出すツールという印象があるが、事実を書き連ねることで、新しい何かを創造することもできる。著者は資料に当たり、いちいち事実を確認し、ノートを書く。エクセルで年表とか作っておけば楽なんじゃないか、と思ってしまうのでだか、そうではないのだろう。
仕事とは全く関係ない、サッカーワールドカップのノートも興味深い。サッカーマニアでもこんなノートは書かない。
ノートに手で書くというのはけっこうハードルが高いんだけど、そのハードルを越えていく好奇心が、著者は強いのだろう。