PCやスマホの普及で、実用的な道具としてのシステム手帳は役目を終えたようです。
いっぽうで、趣味の道具として、女性がシステム手帳を使っています。男性も、趣味としてシステム手帳を使ってみません?
趣味としてのシステム手帳

インスタで「#システム手帳」というタグで検索してみると、ほぼすべて女性ユーザーの投稿です。
色とりどりで、華やか。システム手帳の、モノとしての魅力は失われていません。
「システム手帳STYLE」というムックが毎年末に出ます。そのキャッチコピーの変遷がおもしろい。
▼2016年の第1号
1冊の手帳に知を集積せよ!
かつてのシステム手帳が熱かった時代を再び、みたいな? 完全に男性ユーザーを意識した表紙ですね。
手帳という快楽
「快楽」というキーワードに注目。趣味の部分が大きくなってきたのでしょう。しかし表紙はまだ男性向けです。
一冊あれば楽しみ無限大
3号で、表紙もコピーも女性向けの雰囲気になりました。
▼2019年の第4号
大切なものをHAPPYに集めよう
4号、女性に人気のM5が表紙に。コピーも完全に女性向け。
▼2020年の第5号
カスタマイズが楽しい趣味と実用の手帳
5号はなんと、表紙に載ってるのは女性に人気のM5だけ。
M5、90年代にアシュフォードが「名刺フォン」という愛称で売り出したとき、買ってみたんですが、小さすぎて使いにくかったなあ。昔はミニ5穴と読んでたっけ。女性にはちょうどいい大きさなのかな。
おっと脱線しました。
実際のところ「知を集積する」なら、システム手帳はPCやスマホにはかないません。
しかし、趣味として、自分の好きなものを集めるバインダーとして、女性にシステム手帳は使われるようになったのでしょう。
皮革製品を長期間使い込む 自分だけの道具を作る

皮革製品が好きな男性は多いですね。鞄や財布や、靴。
そしてシステム手帳も、男性が皮革を楽しむアイテムとして、カバンやサイフにその魅力は劣りません。
他の皮革製品に無い特徴もあります。皮革としてのバインダーに、紙(リフィル)、金属や樹脂(ペン)を合わせて、はじめて「手帳」として成立する、というところです。
万年筆や高級ポールペンが人気ですが、お気に入りのペンを楽しみ、書くための紙や書いた後の紙をまとめておくツールとして、システム手帳はちょうどいいのです。
ちょっといい皮革のシステム手帳は数十年使えるし、万年筆も長期間の使用に耐えます。長い期間をともにしたレザーやペン、紙。そこにまた、新たな紙のリフィルを足し、使い続ける。
若いころに使い始めたシステム手帳を60歳になっても使い続けている、というのはカッコいいし、スマホには決してできないことです。
こんなことを手書きしてみよう
趣味でシステム手帳を使う。皮革と紙とペンを楽しむ。といったって、なにすればいいんでしょう。
私の場合、こんなことに使ってます。
タスク管理に

タスク管理はシステム手帳で。ボールペンでスケジュールとタスクを書き出し、クリアしたら線を引いて消します。iPhoneも併用しています。
毎晩、翌日のスケジュールとタスクを、手書きします。一見、無駄で非効率。しかし、必ずしもそうではないんですね。
iPhoneやMacは集中力を奪います。ITは本当に生活を効率的にしてくれるツールなのかという疑問があります。ノイズが増えるばかり。試しに電源を切り、紙にタスクを書き出してみたら、調子がいいのです。
字はていねいに書く。わからない漢字があったら調べて書く。やりづらい、気が乗らないタスクも気合と根性で書く。一心に、夢中で書いているうちに、エゴが消え、自分が字を書くだけの一個の人格になっている瞬間が訪れます。これが悪くないのです。
手書きには、マインドフルネスの効果があるのでしょう。
体調管理に

カロリーや体重管理はiPhoneでやっているが、各アプリに散らばった情報を集めて長期的な傾向を把握するために、必要な情報を手書きでまとめている。
らく書きも

ババっとなにかを書く。意味のない線をひたすら書いていることも。ストレス解消になります。
こういうのは、紙の繊維にインクを染み込ませていくからおもしろい。iPadとAppleペンシルではできないことです。
スマホのバックアップ
重要情報を暗号化したものをリフィルに書いています。
スマホを落としたり壊したりしたときのため。iCloudにバックアップはあるけど、出先だと、代替の端末を確保するまでのタイムラグがあるので。
読書ノート
EvernoteとMac、iPhoneなんかでもやってみたけど、不思議と記憶に定着しないのです。わざわざ見に行くこともしないし。
紙のリフィルに読書メモを手書きすると、記憶するし、10年前のメモでもちょいちょいと見返します。
メタノート
長期目標の管理
人生100年時代。長期目標でもないとヒマでやってられませんね。
老ファイロファックスユーザーがクールでカッコいい
使い込んだ手帳を見るのが好きで、検索してたらフリッカーのグループ、Filofax – The Official Flickr Groupというのを見つけました。
そこに写真を投稿しているGeorge Redgrave氏のファイロファックスのつかいっぷりがカッコよすぎ。

カッコいい。使いこんだ道具の持つ迫力。美しさ。これぞ男の手帳です。
スクリーンショットの右上の写真は、Redgrave氏が手帳の最初のページにはさんでいるもので、亡くなった奥さんだそう。それにしても、お年を召して視力も落ちているはずだが、極小の字を丹念に書き込んでいますね。
つかいたおしたウィンチェスターはカッコいい

使いこんだシステム手帳の特集として、Free & Easyの2012年6月号が見ごたえあります。
表紙からド肝を抜かれる。ウィンチェスターかな。

目次にもウィンチェスターが。

「男の人生をサポートする静物(モノ)たち」。カッコいいコピー。

30年使いこんだサザビーのバインダー。崩壊がはじまっててサイコーにカッコいい。

ヤレたバインダーと、シンプルなボールペンと、すり切れて汚れたリフィルの組み合わせがいい。

表紙のウィンチェスターかな。
一度選んだ道具は徹底的に使いたおす。そこに一本の筋が通っていて、カッコいい。
私物が生物になるまで
「死物を生物に変えることにふけってきた」と、開高健が著書「生物としての静物」で述べています。
使用者の表情がうかがえる、つかいこまれた道具を見るのは楽しいものです。ウェブでも雑誌でも、そういった写真や記事を食い入るように読んでしまうのです。
道具は、つかいこめば、開高がいう「生物」となって、なにかを語りかけてくるのでしょう。
自分の手帳も、そこまで徹底して使い込みたい。
- 2017-06-23初出
- 2020-08-20改訂
- 2020-10-28改訂