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日記

おれに針を刺すな

健診のため病院に行った。気は進まない。採血がいやだ。注射針を刺すのがいやだ。

なぜ針を刺すのがいやなんだろう。痛いからか。注射針を刺すときの感覚をじっくりと味わってみた。激痛、というわけじゃない。ちょっと痛い。胃カメラのほうが痛い。時間も長い。

それでも、私の健診のメインイベントは胃カメラでなくて採血だ。採血が終わって、針が抜かれたときの安堵感といったら。これで次の注射針は1年後だ。1年、生き延びられる。

針を腕に刺す、というストレスで消耗するのだろうか。健診の5日ぐらい前になると、今回の健診はキャンセルしようか、と考える。しかし、そのせいで重篤な病を見逃したら注射が増えるかもしれない。1本の注射から逃げて5本の注射を得るのか。愚かだ。健診には必ず行く。

皮下脂肪が厚めの友人がいた。彼は血管が見えにくい。採血のときは、針を血管に通しにくく、何回も刺し直しされるそうだ。過酷だ。私は血管が見えやすい。刺し直しされたことは一度もない。この肉体に生まれたことに感謝しなくては。しかしそれも昨年の大腸内視鏡検査で点滴を打つときまでだった。3度刺し直しても、血管に針が通らなかった。1ミリちょっとの厚さの皮膚ごしに、コリコリした青い静脈に触れることができるのに。看護師は、手首に近いあたりの静脈に場所を変えた。そこに針を刺すと、ひじの内側よりも痛みは強かった。眉をしかめた。3度刺し直した。針はまだ通らなかった。

苦痛に、目を見開いた。怖いから、針を刺されるときは目を閉じていた。看護師は、うかがうように私の顔をのぞきこんでいた。目が合った。歯を食いしばっていたから、鬼のような形相だったのかもしれない。看護師は白紙のような顔色で立ち上がり、姿を消した。違う看護師が現れて、今度はひじの内側の静脈に、1度で針を通してくれた。この2分の間に、7度も針を刺された。

そんなことを思い出していると、名前を呼ばれた。腕に針を刺され、血を抜かれた。針が抜かれた。これで1年間、針を刺さなくていい。