初めて自作キーボードを組んだ。はんだごてを握ったことがなく、ファームウェアの書き込みもハードルが高そう。でも、自分に合ったキーボードが欲しいから、挑戦してみた。
選んだのは「Corne Cherry Light」というモデル。左右分割。タテにずれた配列。キーの数は通常のテンキーレスキーボードの40%ぐらい。
特殊なキーボードなんだけど、慣れてしまうと作業効率が飛躍的に向上し、もう普通のキーボードは使えないカラダになってしまった。
初めての自作キーボードを組むまで
自作キーボードキットとは
自作キーボードキットとは、基盤、それを支えるプレート、ダイオード、ネジなどがセットになったもの。
既存のキーボードに飽き足らない設計者が作成し、BOOTHなどで販売している。
2018年ごろから流行りはじめたのかな。秋葉原には実店舗「遊舎工房」ができるほど。
以下の記事が、自作キーボードの歴史や、現状に詳しい。
なぜキーボードを自作するのか
リアルフォースとHHKBを購入するぐらいにはキーボードが好きなんだけど、高級キーボードでも不満は消えない。キーの位置とか、数とか。
いくら訓練しても、HHKBぐらいにキーの数が少ないキーボードでも、タッチタイプができない。配列になじめない。もっとキーの数が少ないキーボードが欲しい。
自作キーボードだと、そういった悩みが解決できる。数多いキットから、好みのキー数や配列のものを選べる。
やろうと思えば、キーマップも自分で作ることができるそう。
はんだごてを握ったこともなく、キーマップを作って書き換えるスキルもないのだが、そんなわけで自作キーボードに挑戦してみた。
Corne Cherry Lightを選んだ
ちょうど良いタイミングで、自作キーボードのイベント「天下一キーボードわいわい会 Vol.3」が開催され、参加してみた。
いやーおもしろかった!
数々の自作キーボードに触ってみて、40%、左右分割、親指重視ということで、Corne Cherry Lightを選んだ。
Corne Cherryは左右分割の自作キーボードキットとしてはポピュラーで、ウェブでも情報が多い。Corne Cherry Lighthは、そのCorne Cherryを組みやすくしたキット。
初めて組む初心者にもなんとかなりそう。
電子工作未経験でもウェブの記事を読めばなんとかなる
はんだごてをはじめて握る超初心者だったが、特に失敗することなく組めた。
疑問の答えは、まずビルドガイド、そしてだいたいウェブにある。このパーツの向きはこれでいいのか、と少しでも疑問に思ったら、解決するまで調べよう。半田付けを間違えて、リカバリするのは大変だから。
特に注意したいのが、キーボードとパソコンをつなぐ要のパーツ、promicroだ。
USBコネクタがもげやすいから必ず対策(エポキシ接着剤で補強するだけ)しておきたい。
はんだ付けも他の部分よりピッチが狭くて難易度が高い。老眼が始まってるから、ルーペ用意しておけばよかった。
ターミナルはcdコマンドぐらいしか知らないが、これも検索してウェブで情報を集め、ドキュメントを読んだら、qmk_firmwareをインストールし、ファームをpromicroに書き込むことができた。
Corne Cherry Lightを長期間使ってみて
1カ月でタッチタイプをマスターできた
Corne Cherry Light(コルネチェリーライト、以下コルネと呼ぶ)を使い始めて8カ月経った。
真ん中から左右に分割し、キーの数が42個(通常のテンキーレスのキーボードは100個程度)と少ない特殊なキーボードなんだけど、身体の一部かというほどに馴染んでしまった。
使い始めて1カ月程度で、タッチタイプをマスターできた。25年ほど使ってきた普通のキーボードでは、とうとう身につかなかったのに。
キーボードを全く見ずに入力や操作できるのは快適で、作業の効率が大幅にアップした。
肩が開いて作業時の姿勢が良くなった
キーボードを操作していると、どうしても姿勢が悪くなる。
肩が閉じて、前のめりになる。パソコンのモニタと目の距離が近くなる。これはいかん、と気づいて姿勢を正すが、またすぐに前のめりになってしまう。
コルネを使い始めると、これはすぐに改善できた。両手を置く位置を離すことができる。肩が開く。背筋をまっすぐに保ち、タイピングができる。
肩こりや、背中の不快な痛みが減った。
モニタと目の距離が必要以上に近づかないので、視力の悪化も防げそう。
夢の「ネイティブで親指シフト対応」
キーマップを自分で作成できるのが自作キーボードの利点だ。とはいえ、私には自分でキーマップを作成できるスキルはないんだけど。
コルネは親指シフトのキーマップが公開されてて、ありがたく使っている。
キーボードがネイティブで親指シフトに対応すると、iPhoneやiPadでも親指シフトができるはず。必要なハードウェアを発注して到着を待っているところなので、そのうち実験して記事をまとめたい。
40%キーはどうなのか
通常のテンキーレスのキーボードはキーの数が約100個。それに対するキーの数をパーセンテージで表すと、コルネは「40%キーボード」というカテゴリに分類される。
これだけキーが減ると、複数のキーの組み合わせで、少ないキーを補うことになる。
親指シフトは2つのキーの同時押しで日本語を入力するので、さらに複数のキーを駆使することになる。最初はわけがわからず、キーボード操作のスピードは落ちた。
頭で考えつつタイピングしているので、少し書くだけで非常に疲れる。体が覚えるまでのがまん。1週間もすればずいぶんとなれた。
複数のキーの組み合わせを身体で覚えてしまえば、作業効率や入力速度が飛躍的にアップした。
普通のキーボードが合わない人もいる
コルネを使い始めるにあたり、完全なタッチタイピングを身に付ようと決心し、そのために何も書いていないキーキャップにしたんだけど、そこで初めて自分のクセに気づいた。中指と薬指をぜんぜん使っていない、とか。
コルネは、キーが縦方向にずれている「カラムスタッガード」という配列。動きの悪い中指と薬指も、ホームポジションから指を上下になぞれば、押したいキーにたどり着ける。
しかしながら、薬指を動かしているつもりが中指を動かしていた、ということがよくあって、これもなれて矯正していくしかない。
妻がMacBookでテキスト書いてるようすを観察していると、指が滑らかに柔らかく動き、スラスラとキーをタッチしていくのだが、自分の指は同じ動きはできない。指関節がかたくて、可動域が狭いのかな。
だから、HHKBぐらいのキーボードでも、端っこのキーは押しにくいんだろう。40%になると、やっと10本の指でキーボード全体を把握できるようになる。
身体能力は個人ごとに差があるんだから、指を動かす能力だって、そうなんだろう。既存品のキーボードがどうしても合わないから、自分に合うキーボードを作ってしまうというのは合理的なのだった。
- 2019-12-13初出
- 2020-08-23改訂